秘密結社 人事部

守秘義務だらけの人事担当が教える企業人事の実務と実態と裏の世界


退職代行を使われた側の人事の本音


退職代行のイラスト(男性)
退職代行サービスのイメージ(いらすとや)

うちの会社にも、来ました。退職代行から。

モームリが話題になっていたあの頃、関西にある某労働組合の退職代行担当者から突然電話がかかってきました。「○○さんの退職手続きを代行しております」と。

正直、最初は少し面食らいました。でも人事歴25年、そんなに動揺はしません。冷静に対応しました。今日は、その時の実体験と、人事担当者としての本音をお話しします。


退職代行、何が問題なのか

退職代行自体は違法ではありません。労働者には退職の自由があり、第三者を通じて意思を伝えることも法的には問題ない。

ただし、会社側から見ると就業規則に則った手続きが取られていないという点が最大の問題です。

多くの会社の就業規則には、退職の申し出方法(直属上司への報告、退職届の提出など)や退職日までの引き継ぎ義務が明記されています。退職代行を使った場合、これらのプロセスが丸ごと飛ばされる。


実際にどう対応したか

電話口の担当者に、私はこう伝えました。

①就業規則に則った手続きではない旨を伝える

「この対応は弊社の就業規則に沿った退職手続きではありません」とはっきり伝えました。感情的にではなく、事実として。

②貸与物の返却を依頼する

PC、社員証、制服など、会社の備品は必ず返却してもらう必要があります。退職者本人と直接やり取りできない以上、代行担当者を通じて返却方法を取り決めました。

③今後のリスクを明確に伝える

「この方法で手続きを進めた場合、今後何らかの問題が発生した際は退職者本人の自己責任で対応いただく事項が出てくる場合があります」と伝えました。

脅しではありません。事実として、就業規則外の手続きを選んだことによって、本来会社がサポートできる範囲が限定される可能性があるということです。


労働組合系の退職代行は少し違う

退職代行には大きく2種類あります。

種類できること
一般業者(民間)意思の伝達のみ。交渉はNG
労働組合系団体交渉権があるため、条件交渉も可能

今回は労働組合系だったので、相手には団体交渉権があります。つまり、単なるメッセンジャーではなく、条件交渉もできる立場。これは会社側も知っておくべき重要な違いです。

対応を間違えると、不当労働行為と見なされるリスクもあります。


人事担当者として感じた本音

正直に言います。

残念、というのが一番近い感情です。

本人が直接言いにくい事情があったのでしょう。上司との関係か、職場環境か、あるいは単純に「言い出せない性格」だったのか。それは分かりません。

でも、人事としては「何か手を打てることがあったのではないか」とは思います。退職代行が来るということは、そこに至るまでの過程で会社側が気づけなかったサインがあったはずです。

退職代行の増加は、ある意味で職場環境の問題を映す鏡でもあります。


まとめ:退職代行が来たときの対応ポイント

  1. 感情的にならない — 違法ではないので、冷静に事務的に対応する
  2. 就業規則との齟齬を明確に伝える — 記録に残しておく
  3. 貸与物の返却手順を確認する — 代行担当者を通じてでも必ず
  4. 労組系か民間業者かを確認する — 対応の幅が変わる
  5. 今後のリスクについて説明する — 脅しではなく、情報提供として

退職代行を使う人が増えている背景には、それだけ「普通に辞めにくい職場」が多いという現実があります。人事担当者として、そこから目を背けないことも大切だと思っています。

※本記事は筆者の実体験に基づくものです。個人・企業を特定する情報は省略しています。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Back to top